地下鉄大江戸線(12号線)の東所沢駅への延伸について(寄稿)

先日、ローカル紙に寄稿して掲載された大江戸線の東所沢駅延伸についてまとめた文章です。この件については市内東部にお住まいの方々の関心も高く、私も度々質問で採りあげています。

今回は私の主張というより、現状をまとめることを優先して書かせていただきました。

以下、掲載します。

本市の中長期的課題のひとつである都市高速鉄道12号線延伸の現状について整理しておきたい。なお、とくにことわりがない限り、具体的な年次や数値等は、新座市・練馬区・清瀬市・所沢市・狭山市(準会員)で構成する都市高速鉄道12号線延伸促進協議会が2005年に作成した「東京12号線延伸に向けた地域整備構想基礎調査報告書」をもとに論じるものとする。

延伸の経緯

12号線の延伸については、1985年の国の運輸政策審議会答申で「大泉学園町以西の新座市方面を対象に今後新設を検討すべき方向」とされ、2000年の同審議会答申では「光が丘から大泉学園町までは2015年までに整備着手することが適当」「大泉学園町以西の延伸については、鉄道不便地域の解消が期待されるものの現段階では輸送需要が十分ではないため、今後の沿線開発による輸送需要の動向等を見つつ今後整備について検討すべき路線」とされ、その方向として「武蔵野線方面」との位置づけがなされた。次期の答申は、2000年の答申の目標年次が2015年であることから、同年に出されることが予想される。

実際の整備状況は、2000年の答申で「整備着手することが適当」とされた光が丘―大泉学園町間について、12号線の導入空間となる都市計画道路補助230号線(笹目通り―大泉学園町間)の整備がすでに始まっており、笹目通り―土支田通り間は街路整備事業が進行中、土支田通り―外環道間でも今年度から用地買収が開始されている。ただし、本年度より事業化が予定されていた外環道―大泉学園町間は都財政の影響等から予算計上が見送られている。

延伸部の建設コストは、光が丘―大泉学園町間が531億円、大泉学園町―東所沢間が1,117億円、延伸部全線で1,649億円と想定されており、採算を確保するためには、新座・清瀬・所沢市内の延伸部4駅(新座南部・新座中央・清瀬北部・東所沢)周辺に、通常予測される人口の増減とはべつに、45,000人を定着させる必要があるとしている。

東所沢は決まっているのか

このような状況のなか、東所沢駅については延伸後の目標利用者数を15,500人/日と設定。この目標を達成するためにはさらに周辺に開発人口規模6,700人の市街地整備が必要となり、既成市街地の高密度利用や都市計画道路和田本郷線北側の市街化調整区域を市街化区域へ編入することが提案されている。

JR東日本のホームページによれば、東所沢駅の昨年度利用者数はすでに14,573人/日であり、今後の周辺人口の増減を考慮するとしても、新たに開発人口規模9,000人以上の市街地整備が求められる他の3つの新駅に比べれば、採算を確保するためのハードルは決して高くはない。しかし、ここで留意しなければならないのは、答申において検討すべき延伸の方向は「武蔵野線方面」とのみ位置づけられたことであり、延伸先が東所沢駅と決まったわけではないということである。

新座市の状況

都市高速鉄道12号線延伸促進協議会は「東所沢駅までの一体的整備」を都や県に要望し続けているが、協議会を構成する各自治体には、12号線延伸の必要性や実現可能性に対する判断の違いからか、それぞれべつの思惑もあるようだ。とりわけ、協議会の会長市を務める新座市は、要望活動の先頭に立つ一方で、東所沢駅への延伸が難しくなった場合を想定し、新座市内への1駅延伸等を検討している様子もうかがえる(※)。

以下、2008年新座市議会第3回定例会における須田健治新座市長の発言である。

「都市高速鉄道12号線でありますけれども、東京都の石原知事の考え方が最近は変わってきておりまして、東所沢駅まで都営地下鉄12号線、大江戸線を延ばす必要はないのではないかと、こんなことを機会をとらえて発言しているようであります。東京都交通局のほうからもお聞かせをいただきました。(中略)新座市として、特に私はこの延伸促進協議会の会長をやっておりますので、東所沢まで延ばしてください、一体整備をお願いしますという運動をしていながら、片方で東京都側が、東所沢まで延ばす必要はないというお話を聞いて、だったら1駅だけつくってくれないかと、練馬区の大泉学園町に加えて新座市に1駅だけお願いしますという、そういうお願いをしていいのかどうかというのが1つあります。つい今、言ってしまいましたけれども、これからのこの延伸協議会の運動、活動自体をどのように方向転換していくかということも含めて、やはり考えていく時期に来ているのではないかなというふうに思っております。練馬区側、東京都側とすれば、これは陰の話ではありますけれども、1駅延ばすことについては検討してもいいのではないかと、こういう意見もございますので、新座市としてもぜひ東京都側と、あるいは練馬区と協議をさせていただきながら、何とか新座市方面への延伸へ向けて今後とも努力していきたい、こういう考え方でございます。」

昨年の3月定例会の一般質問では、この新座市長の発言をとりあげ、本市のおかれている現状や要望活動に対する当麻市長の決意を質した。市長からは、新座市長の発言の趣旨はわからないとしながらも、「今後も協議会を通じて東所沢駅までの延伸を強く要望していく」という発言があったが、現下の厳しい財政状況等を考えれば、新座市長の言うように要望活動自体が転換期にあることも事実であろう。また、今年度の新座市長の施政方針によれば、策定中の第4次基本構想総合振興計画との整合性を図るため、都市計画の基本的な方針である都市計画マスタープランを見直し、12号線延伸に向けた新たな拠点を市中央部に整備するための具体的なまちづくり構想を策定するようでもある。延伸の今後に対する新座市の真意を判断するうえでは、この構想が東所沢駅までの延伸を前提とするものになっているのか、あるいは新座市内までの延伸に止まるものなのか、東所沢駅までの延伸を促進させるものなのか、あるいはそうではないのか等、策定状況や内容についても注視しなければならない。

所沢市にできること

上述のように、次期の答申は2015年に出されることになるが、それまでの間に協議会構成市の足並みが乱れてしまっては、東所沢駅までの延伸は覚束ない。当然のことながら、まずは協議会が今後とも一体となって東所沢駅までの延伸を要望することが大前提となる。

また、本市の都市計画マスタープランである「まちづくり基本方針」を見直すことも必要である。現方針は東所沢駅周辺を「地域生活拠点」と位置づけており、12号線延伸により将来の交通結節点となることを想定していないからである。現方針の目標年次は2016年であり、新方針の策定を待っての位置づけ変更では、次期の答申に間に合わない。次期の答申において東所沢駅までの延伸を決定づけるためには、新座市と同様、現方針の見直しが絶対である。

いずれにしても、様々な要望活動が功を奏し、2015年の答申において東所沢駅までの延伸が決定したとしても、今までの例にならえば、開業は最短でも25年から30年後のことと予想される。

※ ここでは詳述しないが、2009年新座市議会第3回定例会において、榎本賢治新座市議会議員は、東所沢駅ではなく将来的な新座駅への延伸を提案している。

以上

平成18年第4回(12月)定例会報告【一般質問その1】

■ 東京12号線の延伸と東所沢駅周辺のまちづくりについて

(中村とおる)
平成12年の運輸政策審議会答申第18号では「光が丘から大泉学園町までは2015年(平成27年)までに整備着手することが適当」、「大泉学園町以西の延伸については、鉄道不便地域の解消が期待されるものの現段階では輸送需要が十分ではないため、今後の沿線開発による輸送需要の動向等を見つつ今後の整備について検討する路線」とされ、その方向として「武蔵野線方面」との位置づけがなされた。

平成17年3月、都市高速鉄道12号線延伸促進協議会が出した報告書「東京12号延伸に向けた地域整備構想基礎調査」では、光が丘駅から東所沢駅までの新設部分の建設コストを1,649億円と設定し、同路線の採算を確保するために、新座、清瀬、所沢市内の延伸部4駅の周辺に45,000人の人口を新たに定着させる必要があるとしている。

東所沢駅周辺には6,700人程度の開発人口が新たに必要となり、報告書は、既成市街地の高密度利用、12号線の導入空間となる都市計画道路・和田本郷線及び同路線と接続する本郷亀ヶ谷線の整備、市街化調整区域である和田本郷線北側の既成市街地への編入を提案している。

しかし、都市マスタープランである「所沢市まちづくり基本方針」ではこのようなことは想定されておらず、報告書でも「所沢市については、既設駅である東所沢駅周辺について、“地域生活拠点”としての位置付けがなされている。しかし、12号線延伸により将来の交通結節点になることを前提とした、広域的な観点からの整理はなされていない」と指摘されているところだ。

1. 現在の都市高速鉄道12号線延伸の具体的状況は。

2. 本市も加入している都市高速鉄道12号線延伸促進協議会が11月13日に上田埼玉県知事あてに行った要望内容、知事の反応は。

3. 12号線が不採算路線とならないためには、沿線地域における人口の確保が必要となってくると考えるが、「まちづくり基本方針」に定められた東所沢駅周辺のまちづくりとの整合性は。

(総合政策部長)
1. 光が丘から先の武蔵野線方面への延伸については、練馬区の大泉学園町までの導入空間となる都市計画道路の施工について今年の8月に事業認可を受けたところ。これを受け、目標年次である2015年の開通に向け、工事が着工する予定。この先の延伸については、平成12年当時の運輸政策審議会の答申において、Bランク、「予想沿線の開発状況、輸送需要動向、採算性、投資能力などを踏まえつつ、整備の必要性、整備方策について検討すべき路線」という位置づけになっている。

2. 大泉学園町までの導入空間である都市計画道路が事業認可となったことや新座市、清瀬市、所沢市も延伸に向けたまちづくりを推進していくので、県も協力してほしい旨、要望を行った。知事からは「今後、人口構成が延伸への決め手となり、人口が増える都市計画を進めていくことが一番の課題となる。乗客の見込については、新座市や清瀬市などからの乗客が重要になる。引き続き県も協力したい。」とのコメントをいただいた。

(まちづくり計画部長)
3. 東所沢駅周辺地域については、現在の土地利用を前提に、店舗等、商業施設の集積を目指したまちづくりを進めているところ。東京12号線の接続は駅周辺地域の活性化にも大きな効果があるものと期待しており、国の動向などを踏まえ、総合計画との整合を図りながら「まちづくり基本方針」に反映していきたいと考える。いずれにしても、沿線全体としてまだクリアしなければならない課題を多く抱えていることから、これらのことを踏まえ、東所沢駅周辺のまちづくりを進めていきたい。

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