「エアコン問題」は2月15日(日) 住民投票へ

報道等でご承知の方も多いと思いますが、市議会は、先に開かれた12月定例会において、市民からの直接請求により議会の審査に付された「防音校舎の除湿工事(冷房工事)の計画的な実施に関する住民投票条例」を修正可決し(※1)、藤本正人市長就任以来、約3年間にわたって市長と議会の間で議論してきた狭山ケ丘中学校の冷房工事中止に端を発する「エアコン問題」(※2)は、住民投票に付されることが決定しました。

投票日は2月15日(日)となります。

なお、本条例の審査に先立ち、議会では一般質問等で再三議論が交わされたほか、平成24年6月定例会において市長に冷房工事の中止に対して再考を促す主旨の「教育環境の改善を求める決議」や「所沢市立狭山ケ丘中学校の復温工事(暖房設備工事)・除湿工事(冷房設備の追加工事)が定められた整備方針に基づき、平成25年度から復温・除湿工事を実施することを願う件」が賛成多数により可決・採択されています。

何を決める投票なのか?

住民投票は、同条例に規定の通り、平成18年2月に斎藤博市長(当時)が決裁した「防音校舎に関する平成19年度以降の整備方針」に基づいて冷房工事を計画的に実施するか否かについて賛否を問うものです。

投票対象を含め、今回行われる住民投票については様々な情報が錯綜している感がありますので、まずは、リンク先下段にある同整備方針をご一読いただければと思います。

この整備方針に対する市長と条例制定請求者の主な主張は以下の通りです。

市長の主な主張

  • 東日本大震災と原発事故を経た私たちは「便利で快適な生活を見直すべき」。最も暑い教室でも30℃を超える授業日は年間10日程度。「暑いからクーラーを」で良いのか。
  • すでに冷房が設置されている宮前小学校を除く防音校舎28校(※3)に冷房を設置するには約78億円(国負担48億円・市負担30億円)が必要となる。税金の使い方として適切でない。

条例制定請求者の主な主張

  • 冷房の設置は、暑さ対策ではなく、騒音対策。冷房の設置が中止となった狭山ケ丘中学校や北中小学校の存する区域は、防衛大臣が定める「自衛隊の航空機の離陸・着陸により生ずる音響に起因する障害が著しい区域」で、国の環境基準が達成されていない。騒音のない地域の学校と同等の教育環境を求めているだけ。
  • 市議会では平成24年6月定例会において冷房工事の中止について市長に再考を促す主旨の「教育環境の改善を求める決議」や「所沢市立狭山ケ丘中学校の復温工事(暖房設備工事)・除湿工事(冷房設備の追加工事)が定められた整備方針に基づき、平成25年度から復温・除湿工事を実施することを願う件」が賛成多数により可決・採択されている。

中村とおるの主張

中村とおるは、以下の理由により、投票の対象となる整備方針に賛成しています。

  • 冷房工事は騒音対策。暑さ対策としては冷房設置以外の方法も考えられなくもないが、防音校舎の騒音対策としては「窓を閉める」ことが必要であると考えられること。
  • 平成18年に決定された整備方針は、当面、航空機騒音の激しい宮前小学校、狭山ケ丘中学校、北中小学校に、温度保持工事(暖房工事)と除湿工事(冷房工事)を併せて実施することを決定したと解釈でき、残りの防音校舎への冷房工事については、設置時期や予算額等が明確でないことから、直ちに残りの26校に冷房工事を実施するとしたものではなく、時々の財政状況等を考慮する余地が残されていると考えられること。
  • 市長の主張する「78億円」は、冷房工事と暖房工事を合算した費用であり、冷房工事のみにかかる費用として正確でないこと。たとえば、「リース方式による本市の普通教室のエアコン設置費用の試算をいたしますと、総額がおよそ20億円となりまして、例えば10年リースでございますれば年間約2億円ということになります(平成23年12月定例会における教育総務部長答弁)」との試算もあること。
  • 小中学校の普通教室への冷房設置は全国的に増加傾向であり、平成22年に16%だったものが平成26年には32.8%まで増加していること(文部科学省調べ)。ちなみに、東京都は99.9%、埼玉県は48.9%。
  • 県内他市においても、さいたま市、戸田市、和光市、新座市、飯能市等は冷房設置率100%であり、上尾市、狭山市等も設置率50%以上であること。所沢市は約2%。

市長のいう「便利で快適な生活を見直すべき」という主張にはうなづける部分も多いのですが、今回の「エアコン問題」については、決裁書に存在しない「78億円」という金額をもちだして説明するなど、いささか強引な印象が否めません。平成18年に決定した整備方針に対する見方もかなり極端な気がします。

まずは、整備方針の通り、騒音対策として残りの2校に冷房を設置し、その後については、地元や議会の意向も踏まえ、財政や施設の老朽化をはじめとする様々な状況を考慮しながら、計画的に冷房を設置していくべきだと考えます。

いずれにしても、2月15日に投票が行われます。市ホームページにも様々な情報がありますが、少なくとも、12月定例会に市長が住民投票条例案とともに提出した意見書(議案第144号「防音校舎の除湿工事(冷房工事)の計画的な実施に関する住民投票条例制定について」に付属)と、本会議で行われた条例制定請求代表者の意見陳述(所沢市議会「議会中継」11月27日分)をご覧になり、ご判断いただきたいと思います。

※1 市民の投票行動にインセンティブを与える等のため、投票数が有権者数の1/3を超えた場合には、結果をより重く受け止めるとの条項を加えた修正案が賛成多数により可決。なお、この修正部分を除いた原案については起立総員(全会一致)により可決。

※2 航空自衛隊入間基地周辺の小中学校に夏場の騒音対策として冷房を設置する計画を藤本市長が中止した問題。なお、整備方針にある宮前小学校については平成21年度に改修工事が終了し、すでに冷房が設置済み。

※3 市内防音校舎は小学校18校(所沢、南、荒幡、北、美原、並木、西富、小手指、上新井、北野、北中、山口、泉、椿峰、三ケ島、若狭、林、宮前)、中学校11校(所沢、美原、中央、南陵、富岡、小手指、北野、山口、上山口、三ケ島、狭山ケ丘)の合計29校。

第2市民ギャラリーと設置条例の必要性について

13日、久しぶりの一般質問を行いました。22年5月からは議長職にあったため、改選後初、1年9ヶ月ぶり、藤本市長就任後初の質問となりました。

今回は、

  • 公有財産の有効活用について
  • 通称「アカバッケ」の安全性について
  • 市長のいう「絆」について

の3点について市の見解を質しました。

まずは「公有財産の有効活用について」です。

この質問は、

  • 第2市民ギャラリーについて
  • 設置条例の必要性について
  • 施設跡地の有効活用について

の大きく3つにわかれますので、それぞれについてまとめてみたいと思います。

第2市民ギャラリーについて

所沢駅東口前の一等地に第2市民ギャラリーという施設があります。10年前、本庁舎の市民ギャラリーを補完する施設として所沢駅東口の旧区画整理事務所を改修して設置されました。選挙時の期日前投票所としての印象も強い同施設ですが、基本的には芸術文化活動や生涯学習活動に関する催しに使用できる施設であり、地元町内会からの要望を受け、平成21年1月より自治会等の地域集会にも使用できることになっています。しかし、この施設の稼働率はその立地に反比例して芳しくありません。平成20年度は10.8%、21年度は11.7%、22年度は32%、昨年度は45%と、上昇傾向にはあるものの、今ひとつの状態が続いています。

こうした状態となってしまっている原因は、市がこの施設(財産)の活用方法を曖昧にしたまま管理・運営を行ってきたことによると私は考えています。

事実、市の個別事業を評価する事務事業評価の評価理由は「平成○○年度から開始し、○年が経過した事業であるが引き続きPR活動に努めていく。しかし、稼働率の現実を踏まえ今後の利用方法等についても引き続き検討を進めていく」と毎年同じであり、根拠法令の記載欄は数年間記載ミスのままでした。さらに、自治体の所有する財産は、法令上、行政財産と普通財産に分類され(※1)、昭和55年6月23日の広島高裁判決(※2)の通り、市の内部基準ではなく実際の使用状況によって分類しなければならないのですが、第2市民ギャラリーは普通財産となっており、さらに、設置および管理の根拠となる条例(設置条例)も整備されていません(※3)。こうした状況が10年も続いているのです。

第2市民ギャラリーを所管する財務部長の答弁は「第2市民ギャラリー用地の将来の活用方法が決まるまで、結果として10年間の暫定利用が続いてしまった。老朽化も進んでおり、改めて施設のあり方について検討する時期にきている。(設置条例の必要性については、)この検討を踏まえた上で考えていく」というものでした。

これからも当分の間、現状の暫定利用が続くのであれば、法律上、第2市民ギャラリーを行政財産とした上で、同施設の設置条例の制定が少なくとも必要とされるはずです。

第2市民ギャラリーについては、存廃も含めた今後のあり方を検討し、その結果を踏まえた早急な改善策が求められます。

※1 自治体の所有する財産は、行政財産と普通財産に分類されます。行政財産とは、自治体が直接事務の執行に用いるもの(庁舎など)や、一般利用に供するもの(公園、道路、図書館、学校など)であり、普通財産とは、行政財産以外のもの(売り払い用の土地、使用目的の定まっていない施設跡地など)をいいます[地方自治法238条]。

※2 「公有財産が行政財産と普通財産のいずれに分類されるかは専らその用途によって決せられ、普通地方公共団体が内部処理として如何なる分類をしているかは関係ない」(昭和55年6月23日広島高裁判決)。

※3 自治体は、住民福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設を設けることができ、その設置・管理については条例で定めなければなりません[地方自治法244条、244条の2]。市が設置した立体遊歩道について、その設置および管理に関する事項は条例で定めなければならないとされた判例(平成14年11月26日広島地裁判決)もあります。

設置条例の必要性について

※3の注釈の通り、一般利用を予定している自治体の施設の設置・管理については条例に拠らなければなりません。条例を制定することにより、「(施設の設置目的に)違反するような恣意的な使用制限を排除して、住民の使用についての便宜を与えるとともに、その利用が不当に害されることがないよう(先述の広島地裁判決)」にしなければならないからです。

しかし、第2市民ギャラリー以外にも設置条例が存在しない施設が数多くあります。たとえば、市内各地にある学童クラブ、柳瀬・中富・山口の民族資料館、秋津駅第1自転車駐車場、西武球場前第1自転車駐車場、老人簡易集会施設わかば、小手指市民ギャラリーなどです。

それぞれ、施設設置当初に様々な経緯があってのこととは推察されますが、住民の利用関係を安定させ、施設のもつ本来のパフォーマンスを発揮させるためにも設置条例が必要であると考えます。

理屈っぽい文章がだいぶ長くなってしまったので、「施設跡地の有効活用について」は次回にまとめたいと思います。

あらためて地方分権を考える(寄稿)

いつものようにローカル紙に寄稿したものを掲載させていただきます。

今回は法律論的な立場から今までと今後の地方分権についてまとめて(?)みました。

以下、掲載します。

国・地方の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に改める地方分権一括法が施行され11年が経過した。この間、たとえば2004年には国・地方間の財政制度改革である三位一体改革が行われ、また、現政権与党である民主党は先の総選挙において地方分権改革をマニフェストの「1丁目1番地」として掲げ、これに国・地方の協議の場や自治体への一括交付金制度の創設を盛り込むなど様々な改革を行っている。

しかし、「では、本当に分権改革が進展し、市民生活が(良い方向か悪い方向かはともかく)変わったのか」といえば、そうでもない。少なくとも、そうした実感はないというのが、多くの市民がもっている印象だろう。

では、翻って「わが国はもともと中央集権国家だったのか」といえば、これも実は、そうでもない。

思想的にはすでに明治初期において福沢諭吉が『分権論』を著し、国は軍事、外交、貨幣を扱い、地方は人民の幸福、警察、道路橋梁堤防、学校社寺遊園、衛生を扱うべきと説いていたし、もともとわが国の地方自治制度はイギリスなどアングロ・サクソン系諸国のそれに比べ、国・地方の役割分担が不明確であって、権限の幅においては自治体にかなりの自由があったのである。

こうした状況のなか、地方分権一括法施行以前にあっても、全国の自治体は、国の動向に関わりなく、市民の行政需要に応えるため、あるいは、市民生活を守るために様々な取り組みを行ってきた。

たとえば、兵庫県川西市や東京都武蔵野市に端を発し、各地で制定された宅地開発指導要綱である。

1960年代、高度経済成長に伴う地方から都市部への人口流入が宅地開発を急激に進行させ、日照公害をはじめとする様々な都市問題を引き起こした。本来、こうした問題には国の法律である都市計画法で対応しなければならないのだが、当時の同法は内容的に不充分であり、また、旧地方自治法には土地利用規制権限が自治体にはないと解釈される条文もあったことから、法律や条例に基づかない宅地開発指導要綱を制定し、開発事業者に任意の協力を求めながら乱開発を防止した。今でこそ批判も多い要綱行政だが、当時としては画期的な政策のひとつであった。

また、同じ頃、東京都は、いわゆる工場公害問題に際し、全国画一の規制であった旧大気汚染防止法では市民の健康を守ることができないと、法律との抵触をも辞せず、工場の設置や大気中の有害物質濃度に関して同法を上回る独自の規制を加えた公害防止条例を制定した。同条例には当初「企業の経済活動を阻害する」との批判もあったが、世論の後押しで成立、結果的には1970年に開かれた「公害国会」において、旧大気汚染防止法が条例による上乗せ規制を認めるかたちで改正されたのである。自治体の政策(条例)が国(法律)を動かした(改正させた)先進的な取り組みである。

この2例以外にも自治体が国に先んじて行った取り組みは多数存在する。本市におけるダイオキシン関連2条例の制定や、近年、全国の自治体で行われている子ども医療費無料化施策もそうであろう。

元来、自治体行政は、自治体を国の「下請け機関」とみなす機関委任事務制度の存在もあって、国の「末端行政」だと言われ続けてきた。しかし、上述の通り、地方分権一括法施行以前にあっても、とりわけ市民に身近な課題について、自治体は国の「末端行政」ではなく、時代の「先端行政」であり続けてきたのである。

ところで、憲法94条は「地方公共団体は(中略)法律の範囲内で条例を制定することができる。」と規定し、これを受けて、地方自治法14条1項には「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて(中略)条例を制定することができる。」とある。これらの規定を文字通りに読めば、法律がすでに規制している事項を条例で規制することは許されないこととなる。他方、同じく憲法92条には「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」ともあり、同条の考え方を適用すれば、「地方自治の本旨」に基づかない法律は条例との抵触を考慮するまでもなく違憲となる。

一般的に「地方自治の本旨」とは、国から独立した自治体が自己の判断と責任において施策を執行するという「団体自治」の原則と、これらの施策はその自治体の住民の意思に基づいて行うべきとする「住民自治」の原則からなると解されているが、これからの地方分権を考える上においても、市民生活に則しつつ「地方自治の本旨」の意味・内容を深化させる取り組みが大切である。

公害防止条例を制定した東京都の事例はまさに「地方自治の本旨」に「市民の健康を守る」という新たな意味を付与し、憲法92条の観点から旧大気汚染防止法を改正させ、地方分権を進展させた格好の事例なのである。

以上