日東地区を歩く

建設水道常任委員会。議題は日東地区のまちづくり

担当職員とともに現地を歩いてから委員会室に戻り、質疑を行った。

現段階でこの地区のまちづくりに関して何らかの結論を出そうという訳ではないのだが、委員間に「市内の現地視察は頻繁に行うべき」との意識があり、最近、保護緑地や元町北地区再開発、北秋津の雨水幹線工事など、現地視察を頻繁に行っている。

実際、現地に行くと思わぬ発見があり、委員会活動ではもちろんのこと、委員会以外での議員活動でも役立つことが非常に多い。

今回も現地を歩くと、同じ地区内とはいえ、所沢駅近くや地区北西側の商業を中心としたまちなみと、北東側の住宅地のまちなみでは大分趣が異なることを実感できた。

質疑では、この点を踏まえ、今後の整備方針やタイムスケジュール、市の後年度負担の度合い、民間資金の活用などについて市の姿勢を質した。

市側の答弁は、まだ具体的なことについては決まっていないとしながらも、
・ 今年度において住民説明会を行い、事業計画案をまとめる
・ 市の後年度負担については、事業が具体的になった段階でシミュレーションを行う
・ 民間資金活用の申し出があれば、積極的に考えたい
・ 駅に近いという地域特性も重視し、関係権利者の意向も踏まえながら、高度利用も視野に入れたい
などというものであった。

ハード面のまちづくりには、多額の費用と多くの権利者との調整が必要なことから、時間がかかることが一般的だが、民間資金の活用や、実際にできたまちの「にぎわい」、人口減少時代であるという観点からは、かなりのスピードが求められている。

スピードを速めることがまちづくりに投じる費用の軽減やリスクを低めることにつながるのである。

また、先日、エリアマネジメントについて小林重敬氏のお話を聞いたばかりだということもあり、ソフトのまちづくりも一体で考えて都市を「育てる」という視点も、今後、生かす必要があるのだろう。

このようなことを考えた委員会であった。

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京都府内各市へ――建水委員会視察

23日〜25日にかけて京都府内の4市(向日市・長岡京市・亀岡市・京都市)を訪れた。

【向日市】
雨水貯留トンネル等、浸水対策について視察。

「雨に負けない街づくり」。説明して下さった担当職員の方々の名刺にはすべてこのキャッチフレーズが書かれている。

向日市は約1,200年前から水害に苦しめられていた地域である。

太古の時代、この地には長岡京があった。しかし、相次いだ天皇周辺の不幸とともに、周囲にある河川が頻繁に氾濫したことから10年間で平安京への遷都を余儀なくされたという。

向日市の雨水排水計画の概要について説明を受け、石田川1号幹線(総事業費約23億3,000万円、貯留量11,700m3)を見学させていただいた。

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大雨が降った時、河川があふれ出す前に水をこのトンネルに取り込み、河川の水位が下がった後にポンプで排水する施設である。貯留状況は市ホームページからも確認できる。

説明をしてくださった職員の方は「下水道事業には多額の費用がかかるが、トンネルのように施設自体は地下にあることも多く、市民の理解を得ることに苦労している」とおっしゃっていた。

【長岡京市】
長岡京駅西口地区第一種市街地再開発事業(事業費:205.5億円)を視察。

よくある駅前再開発のひとつだが、キーテナントとして予定していたマイカルの途中撤退、コンサルタントが同じ会社であるなど、所沢日東地区の再開発・区画整理と多くの共通点があることから今回、視察させていただくことになった。

市役所に再開発・区画整理を経験した人材がいないなかでのスタートであり、国交省から人材を迎え入れたり、第3セクターである長岡京市都市開発株式会社を設立したりと、完成までにはかなりの苦労があったようだ。

おそらく、当初の計画に比べ、多くの床を市が購入することになったと考えられるが、都市計画決定から約9年での事業完成は「かなり早い」との印象を受けた。

ハード面のまちづくりには莫大な費用がかかることから、現状、自治体全体として事業着手にゴーが出にくい状況が続いている。しかし、一方で、ある程度費用がかかっても、50年、100年先を見据えて事業を開始し、できるたけ早く事業を完成させることも大切だということを感じさせていただいた。

【亀岡市】
七谷川野外活動センターを視察。

キャンプ場や三角屋根のツリーハウス、野外調理場、体育施設、グランドなどが完備されている。

昭和57年、地元自治会が自主運営していたキャンプ場に市が青少年の健全育成を目的とした野外活動センターを建設。当時は年間13,000人程度の利用者があったが、近年では7,000人程度の利用にとどまっている。平成18年度からは指定管理者制度を導入し、地元自治会が運営しているとのことだった。

指定管理者である自治会の方からは青少年の健全育成に対する篤い思いを、そして、市職員の方々からは今後の運営に関する戸惑いをお聞きした。

客観的にみて、開設当初の目的からは、この施設の役割は終えたという感じである。推測の域を出ないが、市としては廃止の検討もなされたといったところだろう。

今後は青少年に限らず、世代間の交流を図る施設として運営していきたいとのことだが、自治会関係者の思いと行政改革の狭間で揺れている施設であるという印象を強くもった。

【京都市】
太秦東部地区土地区画整理事業・太秦東部地区第一種市街地再開発事業を視察。

全国的にもあまり例のない区画整理と再開発を一体に行った事業であり、政令市でははじめて、一般市まで含めても静岡県島田市に次ぐ2番目というものである。

実は平成15年にも建設水道常任委員会の視察にて取り組み状況を視察させていただいたのだが、当時何もなかったところに新駅ができ、大きな再開発ビルがすでに建設されていた。

区画整理と再開発の一体的施行の特徴としては「申出換地」制度などにより、権利者が地区内の再開発ビルにも入居できることだが、再開発ビルに入居された方はいないとのことだった。

整備計画の策定にあたっては市民・行政・専門家による検討会など、様々なかたちでの市民参加が行われたようだ。

平成15年に訪れた際には何となく活気のないまちであったが、再開発ビルという新しい顔の誕生により、まちが蘇っているということを肌で感じることができた。

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伊賀市議会基本条例を視察

21日〜22日にかけて議会運営委員会の視察が行われ、議会基本条例を制定した三重県伊賀市を訪れた。

伊賀市では平成16年に自治基本条例が制定。その5条2項に「分野別の基本条例の制定に努める」と定められ、また、当時の議長が議長選挙の公約として議会基本条例の制定を約束したことから、これらを受け、条例の策定に着手した。

制定過程では、議長の諮問機関として「議会のあり方検討委員会」が設置。同委員会を中心に市民や団体との交流・意見聴取が行われ、パブリックコメントを経て、平成19年に制定された。

視察ではこの条例のなかでもとくに注目すべきである「議会報告会」と「政策討論会」の開催について多くの質問がなされた。

(議会報告会)
第7条 議会は、市政の諸課題に柔軟に対処するため、市政全般にわたって、議員及び市民が自由に情報及び意見を交換する議会報告会を行うものとする。
(伊賀市議会基本条例より)

実際の議会報告会は、実施要綱に基づき、議員を5〜6人の班に分け、定例会毎に小学校区単位での報告会を行っている。報告会は、ほとんどの場合、2部構成となり、前半では定例会における議案審査の報告、後半は幅広く市政全般について市民との懇談が行われる。

議会として活動であり、市民から発言を求められた場合以外は、議員個々の意見、見解は述べないこととされている。

(政策討論会)
第12条 市政に関する重要な政策及び課題に対して、議会としての共通認識の醸成を図り、合意形成を得るため、政策討論会を開催する。
(伊賀市議会基本条例より)
(討論会)
第4条 討論会は、座長が招集し、これを主催する。
2 討論会で意見集約された事項は、議会として行政へ対応方を要請できるものとする。
(議会政策討論会設置要綱より)

議会として政策を実行していくための議員同士の意見集約の場であり、集約された事項は議会として行政へ対応方を要請することができる。

実際、議会としてこの権限を利用し、新たに設置予定の認定こども園候補地について「見直すべき」との要請がなされ、市長はこの問題について全員協議会を開催してほしいと議会に要請をしていきたという。

「議会報告会」「政策討論会」に共通する特筆すべき点は、「議会」と「議員」を明確に区別していることである。

二元代表制の一翼を担うのは「議員」ではなく「議会」である。一般質問などでみられる議員の発言はあくまでも一議員の発言であり、それ以上でも以下でもない。しかし、議会全体での意思は法例でも担保されているし、その意思に対して議会は責任を負い、行政にも政治的責任を課すことになる。

かつての越阪部議長は所沢市議会の定数36をとり、「36人一学級」ということばをよく使っていたのだが、おそらく所沢を含むほとんどの自治体議会でも「議会」と「議員」の区別が明確にされていないままに通常の議会運営が行われているのが実情ではないであろうか。

策定過程にある所沢の自治基本条例、そして、将来的には制定が視野に入る議会基本条例にこのようなこと盛り込む必要性をあらためて感じさせていただいた。

議会基本条例の制定については、北海道栗山町、そして、今回訪れた伊賀市が有名であり、伊賀市も全国からの視察が殺到しているとのこと。

お忙しいなかを対応して下さった伊賀市議会の事務局の皆さまにはあらためて感謝を申し上げたい。