東所沢駅南東地区の土地利用について〔令和4年第3回(9月)定例会 一般質問 その4〕

〔中村とおる〕
平成26年に東所沢駅南東地区が本市の街づくり基本方針に「土地利用転換推進エリア」として位置づけられた経緯と理由についてご説明いただきたい。

〔街づくり計画部長〕
同地区は東所沢駅から約500mの距離に位置していることや、都市高速鉄道12号線の延伸先が平成12年1月の運輸政策審議会で大泉学園町から「武蔵野線方面」へと答申されたこと等、交通利便性の観点から人口増や企業誘致等の可能性といったポテンシャルの高さをふまえ、将来的に新しいまちづくりが展開されるべき地区として位置づけたものだ。

〔中村とおる〕
「土地利用転換推進エリア」として位置づけられた後、現在までの同地区への対応や市役所における検討状況はどうか。

〔街づくり計画部長〕
産業系利用を含めた土地利用の方向を引き続き検討する必要があることから、令和2年に策定された都市計画マスタープランにおいて「土地利用検討エリア」として位置づけた。サクラタウンの立地や開智学園の開校(令和6年4月予定)、都市高速鉄道12号線が東所沢駅まで延伸することが交通政策審議会で答申されたこと等、駅周辺の土地利用は大きく変化しており、その状況を注視してきた。本年1月には地元地権者で構成される組織の方々と勉強会を開催し、地域のご意見も頂戴した。今後もこのような機会を通じて、ご意見を伺っていきたい。

〔中村とおる〕
先日、同地区の地権者や自治会関係者とお話しする機会があった。様々なご意見を伺ったが、改めて地域の関心の高さと期待を認識したところだ。同地域の街づくりをもう一歩進めるため、何か行なっていただきたいが、いかがか。

〔街づくり計画部長〕
まちづくりを進めるにあたっては、時代の要請や国・県・市のまちづくりの方向性等を考える必要がある。地権者をはじめとした方々の多くのご賛同も必要だ。また、都市高速鉄道12号線の延伸を見据えつつ、駅周辺と一体性をもったまちづくりも必要だ。今後も地域の方々との勉強会などを通じて検討していく。

歩行空間における弱視者への配慮について〔令和4年第3回(9月)定例会 一般質問 その3〕

〔中村とおる〕
市民の方から次のようなご相談をいただいた。「目が悪く、買物や通院に苦労する。(武蔵野線の)線路際の道路の様に白線があると安心して歩ける。東所沢地区は数カ所の道路に白線が敷かれているが、(東所沢)和田地区は殆どない。道路の片側だけでも白線が有ると弱視者には行動範囲も広がり、非常に助かる。」というものだ。道路を建設・点検する際、弱視者への配慮はどのように行われているのかご説明いただきたい。

〔建設部長〕
歩行空間を確保した建設に努めている。点検する際は、路面の状況や歩行者の妨げになるような看板等障害物がないか、区画線が見えづらくなっていないか等に注意を払いパトロールを実施している。

〔中村とおる〕
市民の方がいう「道路の白線」とは、歩道が設けられていない道路における車道と路側帯を分ける外側線のことだと思う。幅員によってのことと考えるが、白線が引かれている場合とそうでない場合がある理由をお答えいただきたい。

〔建設部長〕
運転者のための目印として視認性を高めるため設置している。設置に際しては、警察との協議の上、道路幅員だけでなく交通量や車両通過時の安全性等を総合的に判断することから、外側線が引かれている場合とそうでない場合がある。

〔中村とおる〕
弱視者といっても抱える症状や悩みは様々だが、社会の高齢化にともなってこうした方が増えることは容易に想像できる。「歩きたくなるまち」を推進している本市の今後について伺いたい。

〔建設部長〕
弱視者の方だけではなく、歩行者が安全安心に道路を利用していただけるよう取り組んでいく。

ふるさと納税について〔令和4年第3回(9月)定例会 一般質問 その2〕

ふるさと納税制度に関する今後の対応について本市の姿勢を質した。

同制度の利用件数・寄附金額は、数々のポータルサイトの登場やワンストップ特例制度(※1)の創設、新型コロナウイルス感染症の広がりによる「巣ごもり需要」等の影響により、全国的に増加傾向にある。

一方、本市では、平成29年度よりふるさと納税に係る返礼品の提供を取りやめたこともあり、平成28年度に409件あった寄附件数は、年度によってバラつきはあるものの、おおむね100件程度で推移している。受け入れた寄附金と控除された税額、その他経費等をふまえた実質収支も直近の年度では約2億2,000万円の赤字だ。

質問のなかでも触れるが、現在の同制度に課題がないわけではない。しかし、この状況がこのまま続くことが良いとも思えない。財政的な観点でいえば、市は何らかの対応を講じるべきだろう。


〔中村とおる〕
全国のふるさと納税の受入額と受入件数の推移をどのように認識しているか。

〔財務部長〕
総務省の発表によれば、令和元年度が4,875億3,878万1千円、23,336,077件、令和2年度が6,724億8,955万5千円、34,887,898件、令和3年度が8,302億3,935万2千円、44,472,920件であり、受入額・受入件数ともに増加傾向にあると認識している。

〔中村とおる〕
本市における直近のふるさと納税受入額及び受入件数と、ふるさと納税に係る税控除額を踏まえた実質収支額について教えていただきたい。

〔財務部長〕
令和3年度の受入額と受入件数は2,347万6,588円、57件で、受入経費と寄附金控除を差し引いた金額は▲約9億4千万円。翌年度の地方交付税での補填見込み(※2)を考慮すると、▲約2億2千万円となる。

〔中村とおる〕
県内他自治体の実質収支額の状況(上位3市と下位3市)と本市の順位について教えていただきたい。

〔財務部長〕
普通交付税での補填を考慮せずに算定すると、上位3市は、1位が北本市で約4億2千万円、2位が秩父市で約2億3千万円、3位が三芳町で約1億1千万円。下位3市は、63位がさいたま市で▲約73億2千万円、62位が川口市で▲約17億4千万円、61位が本市で▲約9億4千万円である。ちなみに、60位が越谷市で差引額は本市とほぼ同額となっている。

〔中村とおる〕
ふるさと納税制度、とくに返礼品のあり方については議会においてもよく議題となる。先の定例会でも、ふるさと納税制度が、本来の趣旨から大きくかけ離れてしまったため、返礼品の提供を取り止めた旨の答弁があったが、改めてふるさと納税の趣旨と返礼品をやめた理由についてご説明いただきたい。

〔財務部長〕
ふるさと納税の趣旨は「自分を育ててくれたふるさとに恩返しがしたい」という気持ちに応えるためにはじまった制度だ。返礼品を止めた理由は、返礼品競争となってしまった現状が、制度本来の趣旨から大きくかけ離れていることを認識したため。返礼品競争を止めることで同制度への疑義を表明することとした。

〔中村とおる〕
現行の制度が、たとえば「高所得者が優遇される制度である」とか「多くの特産品等をもつ自治体とそうでない自治体の間に不公平がある」等々、課題がない制度だとは思わない。だが、ふるさと納税の広がりと今後を考慮すれば、本市がこのままで良いとも思わない

返礼品を使って「物で釣る」ことが全て良いとは考えないが、健康のために歩けば抽選で農産物が当たったり(※3)、カードをつくると、ほぼ現金に等しいポイントが2万ももらえたりする施策(※4)が普通に行われていることも事実だ。先般、目標金額に達した北秋津・上安松の森を守る事業に係るクラウドファディングも、ご提供いただいた貴重な品を活かすことから実施にいたったとはいえ、「物で釣る」ことを全て否定した施策とはいえない。

返礼品競争にも批判がある。しかし、返礼品の存在があったからこそ、ふるさと納税制度が国民に認知・利用され、一部は寄附者が本当にお世話になった自治体を潤わせただろうし、こうした展開があったからこそ、ガバメント・クラウドファンディング(※5)等、地方自治体の新たな資金調達手法も誕生したのだろうとも考えられる。

返礼品は確かに物だが、ただの物ではない。各自治体が地域活性化のためにがんばった知恵と努力の結晶だと考えてみてはいかがか。

応益性の高い住民税が控除対象となることについても疑問の声がある。所得税が所得再配分的性質の強い応能課税であるのに対して、住民税は住所地の自治体が提供するサービスの受益に応じて、広く住民にその経費を分任させようとする応益課税の性質を強くもっているからだ。しかし、そもそもふるさと納税に係る税控除額には概ね2割という上限があるし、住民税は特定のサービスがもたらす受益に対して特定の人がその対価を支払う使用料や手数料ではない。人口移動の激しい時代でもあり、住民税の受益の範囲をもっと広くとらえてもよいと思う。本市が建設した道路や公園は、もちろん本市の住民が主に利用するが、他自治体にお住まいの方も利用する。その逆で、本市の住民が他自治体が建設した道路や公園を使うこともたくさんある。他自治体が一生懸命守ってきた水源のおかげで本市の住民が美味しい水を飲めることもあるのだ。受益を狭くとらえる論理は課税側の論理であって、もう少し納税者の視点に立って住民税の応益性を理解してもよいのではないか。

同制度も用いて「地域を活性化させよう」「地域課題を解決しよう」、同制度の負の側面に対しては「税の流出を止めよう」としている自治体は実にたくさんある。新聞報道等によれば、川崎市は「物で釣るのではなく、市や事業者の魅力を伝えていく」「税の流出を防止する」ことを目的に、本年6月、ふるさと納税の特設サイトを開設した。川越市では本年8月から返礼品として特殊詐欺対策に有効な「防犯通話録音機」の設置サービスを開始。市外在住者がふるさと納税として26,000円を市に寄附すると、市内に住む高齢となった両親等の固定電話に録音機が設置される仕組みだそうだ。興味深い取り組みだと思う。

一方、税の流出が止まらない世田谷区は、区報において「ふるさと納税特集号」を作成。区民に対してふるさと納税にともなう区の税収減を解説する等、税の流出防止に努めている。

平成29年、本市は返礼品の提供をやめた。私はその決断を評価した。当時は返礼品の調達率等に何ら規制がなく、過度な返礼品競争が本来自治体が得るべき税収の総額を日に日に減らしていた状況があったからだ。しかし、現在はそのような状況にない。返礼品の調達率については3割、その他の費用を合わせて5割以下とすることになっている。この規制は同制度が返礼品等の提供を前提としたものになったとも考えられる。

以上のような状況を踏まえ、ふるさと納税制度に関する本市の対応について伺う。

〔市長〕
なぜふるさと納税を利用する方が増えているのか。ふるさとを想う人が増えたのか。そうではなくて「どうせ税を取られるなら、物を貰った方が得だ」と思う人が増えているからだと感じている。これでは社会が壊れてしまうのではないかと思う。公がつくる制度や仕組みは、よき社会に人々を近づけるものでなくてはならない。よき社会とは、かんたんに言ってしまえば、がんばった人が報われる、弱い立場の人は守られる社会だ。この納税制度はそれにもとるものだ。

納税とは、とくに住民税は、自分や子どもたちが住んでいるまちを支えていくための「参加券」のようなものだ。競争によって勝ち取ったり、どこにしようか選んだり、まして、お金持ちほど得ができる、そういうものではないはずだ。

国と自治体、自治体同士の税の偏在をただすためにこの制度はつくられたと思うが、これは地方交付税制度の役割だ。これで不十分であるなら、国の責任において、新たな制度をつくればよいと考える。その手を抜いて、市場原理と競争と個人の欲に委ねるのは違うのではないか。

返礼品競争に参加しても、黒字になることは難しい。県内で2,000万円以上の黒字団体は63団体中7団体で、48団体が赤字だ。全国的にも都市部を除いて23%は赤字団体であり、弱い自治体を救う制度にも残念ながらなっていないのが現状だ。

本市のふるさと納税は返礼品こそ扱っていないが、参加すること、来ていただくこと、貢献していただくことなど、物ではなく「こと」でやってきたし、これからもやっていくつもりである。

〔中村とおる〕
市長の仰ることは理解できるが、実際の赤字に対して何ら対応していないことは問題だ。また、「返礼品はダメ」ということを先に決めてしまうと、ふるさと納税制度全体の可能性や将来が見えきれなくなるのではないか。

自治体運営を行う上で、地方交付税制度の充実は大切なことだが、国が予算配分を決める同制度だけでは、自治体が国ばかりをみて仕事をしてしまう。地方創生の時代にあって、がんばった自治体にインセンティブが与えられる仕組みがあってもよいと考える。


※1 ふるさと納税をした後に確定申告をしなくても寄附金控除が受けられる制度

※2 ふるさと納税による減収額の75%は地方交付税により国から補填されることになっている。

※3 トコトコ健康マイレージ事業

※4 マイナンバーカードの取得などを行った方が、最大20,000円分の電子マネー、クレジットカード、QRコード決済等のポイントがもらえる制度

※5 自治体が抱える問題解決のため、ふるさと納税の寄附金の「使い道」をプロジェクト化し、これに共感した方から寄附を募る仕組み