湯浅誠『岩盤を穿つ』(文藝春秋、2009年)
私の師匠である村上順・明大院教授は大学院の授業で「物事を伝えるのに重要なのは『概念化』だ」ということを仰っていましたが、筆者は「格差」という言葉から「貧困」を抽出、再概念化した張本人。
日本の脆弱なセーフティネットが「NOと言えない労働者」を生み、彼らの労働市場への再参入が正社員の低処遇化を進め、労働市場を愚劣化し、結果的に社会全体の活力を奪っているとしています。
その他、自己責任論の前提となる「選択可能性」についての話や、日本人の「貧相な貧困感」についての話など、大変興味深く、あっという間に読んでしまいました。
本書を読む前は、「貧困」を再概念化させ、年末には派遣村を創出。これだけで「活動家」湯浅誠氏の「勝ち」という気がしていましたが、一番感動したのは、本書に散りばめられている活動に対する「自己反省」です。
私の場合、運動をつなげていくという発想は弱さの自覚から生まれています。我々は小さいので、自分たちだけでは何もできません。「いろいろな人たちとつながらなければ、何もできない」という自覚があるから、一生懸命考えるのです。(P.188)
ちなみに、湯浅氏は所沢市在住と書いてありました。現在はわかりませんが。