衆議院が解散しました。
ご存知の通り、直接の引き金となったのは郵政民営化をめぐる議論であり、これについてはもちろん賛否両論があると思います。しかし、解散へ至る一連の政治状況を振り返ると、今回の選挙は、ただ郵政民営化の是非を問うだけのものではない気がしています。(首相は「郵政民営化の是非を国民に問う」と明言していますが……。)
小泉首相は就任後から今までの首相が取り組みたくてもなかなか成しえなかった財政改革や三位一体改革、派閥論理による大臣任用等を、政治主導、首相先導のもとに改革してきました。政治に対する官僚優位といわれたこの国の主導権をまさに「官」から「政」に、そして、自民党内の領袖支配をぶち壊してきた稀にみる首相です。私自身は自民党に党籍をもつものではありませんが、このような小泉首相のリーダーシップについて、高く評価しています。
「郵政改革ができなくて、構造改革などできるわけがない」という首相の言葉はまさにその通りであり、郵便事業はともかく、郵貯・簡保で集められた資金が、道路公団をはじめとする省庁にぶらさがった特殊法人に流れ、無駄遣いが行われている現状は早急に解決すべきと考えます。首相が「改革の本丸」と位置づける個人的心情まで理解するものではありませんが、郵政民営化は今後も進められるであろう官から民への構造改革の試金石ではないかと感じています。
また、今回、「政治空白をつくるべきではない」、「外交や年金など、郵政より重要な案件があるのではないか」という声も聞かれますが、個人的には核心を突いた発言ではないと考えます。なぜなら、今求められているのは、日本の未来を決める、既得権に左右されない大胆な構造改革であり、今の政治状況のままでこれらの改革を行ったとしても、妥協、骨抜きなどの利益調整が行われ、期待した成果は現れないと考えるからです。そういった意味では、今回の選挙が新旧の政治家を入れかえるチャンスであり、日本の将来を決めるターニングポイントである気がしています。
一方、民主党はこの選挙を政権交代に向けた「千載一遇のチャンス」ととらえているようです。民主党が政権を奪取し、政官業の癒着を断ち切ることには一定の意味があるでしょう。しかし、その後も民主党が本気で改革に取り組むのであれば、民主党のもつ労組依存体質をどう解消していくのかが問われることになります。自民党にとって郵政改革が今後の構造改革を進める上での試金石であるならば、民主党にとっては労組からの脱却をどう示していくのかが、試金石となるでしょう。
いずれにしても、9月11日に投票が行われます。数十年先の日本を決める上で、たいへん重要な1日になることは間違いありません。政治家は選ばれてはじめて公式の場で活動できるようになりますが、その政治家を選ぶのは9月11日に投ずる私たちの1票1票です。