公会計改革研究会編『公会計改革―ディスクロジャーが「見える行政」をつくる』(日本経済新聞出版社、2008年)
最近読んだ本のなかではベスト3に入る良書。
座長である神野直彦氏(東京大学大学院教授)以下、学者や首長、会計士などから構成される研究会のメンバーが公会計改革を様々な観点から論ずる。
実は、本書を読むまで、地方財政健全化法など一連の公会計改革にはあまり関心をもてなかった。というのは、行政がもつ財産(例えば、道路)を公正価格で評価したところで売却できるわけではないと思っていたし、福祉やまちづくりなど、どの分野にどれだけ予算を使っているのかについては、議会審議である程度判断できると考えていたからだ。
つまり、公会計改革が、現実の行政改革や市民への説明責任を果たすことにどう結びついていくのか理解できなかったからである。
本書は、このような点を含め、公会計改革が求められる背景から財務書類4表の見方に至るまで丁寧に解説してくれる。
とりわけ、神野氏による第1章「公会計改革の視点」は素晴らしい。
● 市長マニフェストと第4次行政改革大綱について
(中村とおる)
第3次行政改革大綱の計画期間終了に伴い、本年4月、「第4次行政改革大綱『行政経営』有言実行宣言」が策定された。
計画の内容については一定の評価をしているが、就任約半年で当麻市長の今任期の大部分を占める平成23年度までの行革大綱が発表されたことに、少々びっくりした。
本年2月、大阪府知事に橋下徹氏が就任され、「暫定予算」あるいは、様々な施策をゼロ・ベースで見直すということが話題となっていたので、斎藤前市長から「政権交代」をされた当麻新市長の考える行革は、本当にこれで良いのだろうかと疑問をもったからだ。
また、大綱のなかには「トップマネジメントの強化」が謳われているが、この大綱の策定過程にトップマネジメントが本当に働いたのかについても疑問である。
1.市長のいう「『生活者の目線』で市役所改革」とは具体的にどういうことなのか。議員も職員もそれぞれ「生活者の目線」で行革あるいは自治体経営を考えているはずだが。
2.第4次行政改革大綱の策定過程において市長はどのような指示を出したのか。
3.人件費の抑制についてどう考えるのか。
4.第4次行革大綱に掲げられた施策の一部は漠然とした実行内容となっているが、あらかじめ「予測」「目的」を明確にする必要があるのではないか。
5.市長の考える行革は本当にこれでよいのか。さらなる行革は検討しないのか。
(市長)
1.「市民の不安や痛みをしっかり受け止める政治」を基本姿勢として市民生活の「安全性・快適性・利便性」に目を配りながら、「生活が第一の所沢」を目指した市政運営に努めている。こうした基本姿勢のもと、行政は、主権者たる市民と同じ目線に立って、市民生活を支えるべく、仕事を進めていかなければならないとの考え方に基づいたものだ。
2.約半年の短い時間ではあったが、可能な限りの時間と労力を費やし、行革大綱の策定に取り組んできた。策定過程を通じて指示したことは様々だが、一言でいえば「私の改革への思いを伝える」ということであり、誰にも理解され、わかりやすく、納得性の高いものにしてほしいということだ。
3.人件費総額については、人事院勧告や公務員制度改革をふまえながら、引き続き取り組んでいかなくてはならないと考えるが、併せて、「がんばれば報われる」という制度を構築し、「平等から公平な」給与体系の整備が必要と考える。
4.計画に基づく具体的な事業に取り組むなかで評価指標が導き出されてくるものと思うし、そうした職員の能力に期待をしている。
5.行革に「終わりはない」と思っているし、「これで良い」と思った瞬間に前進は止まってしまうので、常に前向きな姿勢で臨んでいきたい。まずは、大綱に掲げた44の取り組みをしっかりと実行していくことに専念したい。
■ 行政改革(行政改革大綱、組織の改変など)について
(中村とおる)
1. 平成16年、行政改革大綱として「『行政経営』有言実行宣言」が策定されたが、計画有効期間を平成16年から19年の4ヵ年としており、その実施期間は残すところ1年あまりとなっている。この「『行政経営』有言実行宣言」の本編中には「行動計画表」として各論的な行動計画が網羅されているが、これまでの活動をふり返ってどのような成果を上げているのか。
2. 平成18年2月には行政経営推進委員会から「今後の行政経営のあり方について」という提言書が出されているが、この提言はどのように生かされたのか。
3. 「計画」、「予算」と同様に重要な分野である「組織や機構」に関連し、行革的視点から必要な取り組みは進められているのか。
(総合政策部長)
1. 総論的な視点にとどまらず、実質的な成果につなげていくために行動計画表を設けた。行政評価制度の充実をはじめ、「第2次定員適正化計画」、「民間委託化推進計画」を策定するなど、限りある資源の再配分と有効活用を推し進めつつ、様々な行政分野で最小の経費で最大の効果を求めているところ。
2. 提言の内容は大きく3つであり、「戦略性の強化」、「市民との意識の共有化と戦略的な進捗管理」、「市民との協力による取り組みの強化」。これらは各行政分野での具体的課題につながっていると認識している。提言を踏まえ、18年度から新たに「施策評価」を実施した。
3. 見直しの必要性を把握し、検討を行っている。今年度から「政策マネージャー」制度を発足させるなど、弾力的な運営を実施している。
戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(中公文庫、1991年)
いわずと知れた名著であり、説明に多くのことばは必要ないのかもしれません。
ミッドウェーやガダルカナルなどでの作戦の失敗を通じで「旧日本軍はなぜ負けたのか」を明らかにし、そこから導かれる組織の今日的課題を考察しています。
「組織が継続的に環境に適応していくためには、組織は主体的にその戦略・組織を環境の変化に適合するように変化させなければならない。このようなことができる、つまり主体的に進化する能力のある組織が自己革新組織である(p. 374)」。
「日本軍は(中略)きわめて安定的な組織だったのではなかろうか。『彼等(陸海軍人)は思索せず、読書せず、上級者となるに従って反駁する人もなく、批判を受ける機会もなく、式場の御神体となり、権威の偶像となって温室の裡に保護された。永き平和時代には上官の一言一句はなんらの抵抗を受けず実現しても、一旦戦場となれば、敵軍の意思は最後の段階迄実力を以って抗争することになるのである。政治家が政権を争い、事業者が同業者と勝敗を競うような闘争的訓練は全然与えられていなかった』(高木惣吉『太平洋海鮮史』)(p. 376)。
所沢市も「自己変革型市役所を目指して」をサブタイトルとした「『行政経営』有言実行宣言」を平成16年に発表。これに基づき、「行政経営推進プラン」・「第2次定員適正化計画」・「民間委託化推進計画」を策定し、実行に取り組んでいます。
本書でとりあげられている組織は軍隊ですが、上記引用部分の「組織」や「軍(人)」を「市役所」と読み替えても同じようなことがいえる部分がある気がします。
なお、所沢市の行革についてはこちら。このページでは、全体がわかりにくいので、「行政経営」有言実行宣言からみていただければと思います。
龍慶昭・佐々木亮『政策評価トレーニング・ブック―7つの論争と7つの提案』(多賀出版、2003年)
おススメ本です。
セオリー評価、プロセス評価、インパクト評価、コスト・パフォーマンス評価という基本的な4種類の評価や、最新の潮流であるパフォーマンス・メジャーメントを、例題を示しつつ、わかりやすく記述しています。
近年、国・自治体など、公共部門にも「評価の視点」が導入され、一種の行政評価ブームとなっています。私も12月議会で施策評価の導入について一般質問をさせていただきましたが、所沢市でも来年度から実施される後期基本計画に「評価」の視点を加え、実施中の事務事業評価とあわせて施策評価を導入する予定です。
【参考】
・ 所沢市の行政評価
・ 行政評価を考える
・ 行政評価システム(守谷市)
M・ハマー&J・チャンピー『リエンジニアリング革命―企業を根本から変える業務革新』(日経ビジネス人文庫、2002年)
大学院の授業で参考文献として挙げられていました。
もはやビジネス書としては「古典」となってしまっている本書ですが、行政官庁のマネジメントには今でも大変有用な一冊であると思います。
「『どうしたらこれを速くできるのだろうか』とか、『どうしたらこれをうまくできるのだろうか』とか、『どうしたらこれをより少ないコストでできるのだろうか』などということではなく、『そもそもなぜそれを行うのだろうか』(p.16)」と問いかけることによって、業務プロセスを根本的に変えた方策や事例が書かれています。
「私は(知事就任の)最初から、この(90年代のホワイトカラー革命を支えた理念である)リエンジニアリングをベースにやろうと考えました」(※)。
行政改革で有名な静岡県の石川嘉延知事のことばです。
※ 後房雄「静岡県の業務棚卸・再訪」 ぎょうせい『月刊 ガバナンス』平成17年10月号より。
■ 行政評価と総合計画について
注:前段が少し長くなりますが、リンク先を参照しつつ読んでいただけたらと思います。
(中村とおる)
行財政改革の一環として、本市でも14年度から事務事業評価を行っており、評価結果がホームページ上に公開されている。今年度の評価結果においても、予算に係る評価の二次評価ベースで、減額が71事業、休止が1事業、終了が22事業と一定の効果を上げているようだ。
しかし、評価表の書き方や活動指標、成果指標については疑問もある。
例えば、「地産地消事業」。事業内容の欄に「地場産野菜の学校給食への導入、市民への農産物無料配布等を実施することで、地産地消を図る。また、直売所の設置により消費拡大を図る」と書いてあるが、成果分析指標は「イベントにおける農産物の無料配布個数」となっており、15年度の目標値が2,200、実績が2,200。16年度の目標値が2,600、実績が2,600。もちろん、無料で農産物を配るわけであるから、いずれ年の達成率も100%となっている。
この数値はいったい何を意味するのか。何を評価しているのか。
本来、地産地消を推進するための事業であるから、どのくらいの量の農産物が市内で消費されたのかということを把握し、記入しなければならないのだが、農産物の無料配布個数が成果指標となっている。
これは、事業全体を示す適切な指標が見つからなかった、あるいは、データとして手元に無かったケースなのではないか。
次に、「火災予防運動事業」。事業内容は、ポスターや講習会の開催によって火災の発生を予防するというもので、成果指標は「人口1万人当たりの出火割合(出火率)」となっている。15年度の目標値が5.0、実績が4.2、達成率119.6%。16年度の目標値が4.4、実績が5.6、達成率78.6%となっている。
この成果分析もどうかと思う。なぜなら、事業で行っている内容と成果指標があまりにもかけ離れているのではないか。
仮に、たった1人の放火魔が現れ、市内数十箇所に火をつけたとしたら、職員の方が一生懸命この事業を行ったとしても、実績は達成目標から大きく後退してしまうのではないかと考える。
これは、事業内容と成果指標がかけ離れ、適切な分析ができていないケースではないのか。
最後に、「緊急通報システム整備事業」。慢性疾患等のある一人暮らしの高齢者に緊急通報用の通信機器を貸与するという事業で、成果指標は年度別貸付台数となっている。15年度の目標値が150、実績が133、達成率88.7%。16年度の目標値が150、実績が129、達成率86.0%となっている。
一見、事業内容を適切に表しているように思えるが、この事業は、総合計画の体系として、高齢者福祉という大柱のなかに位置づけられており、そもそも、緊急通報用の通信機器を使わずにいきいきと生活できる高齢者を増やすことこそが、本来の高齢者福祉政策全体に求められている姿ではないのか。
だとすると、この事業単体に数値目標を設定し、達成率を計ること自体は、従来の予算全額執行を目標とすることと変わりはない、もしくは、評価という点ではあまり意味のないことだと考える。
事務事業評価のみでは、これらを包括する施策・政策体系全体を把握することは困難であり、施策全体の有効性・効率性を図ることは難しいのではないか。
(1) 事務事業評価の現状や成果、今後は?
(2) 施策評価も必要と考えるが見解は?
(3) 策定中の後期基本計画の進行管理を施策評価で行う必要があると考えるが見解は?
(4) 後期基本計画は市民参加で策定している計画であるので、評価に関しても市民参加があってもよいと考えるが、見解は?
(総合政策部長)
(1)本年度は915の事務事業について評価を行い、47事業について予算措置の終了という評価が出されるなど、事務事業の見直しという意味では徐々に定着してきている。
ただし、事務事業評価は最も基本的なレベルでの評価であるために、まちづくり全体という視点からの相対的な評価や事務事業の優先順位付けが難しい。
今後はこうした課題に対処しつつ、一層効果的な仕組みになるようにしていきたい。
(2、3) まちづくり全体という視点での評価は事務事業のレベルではなく施策レベルでの評価がふさわしいと考えている。後期基本計画の開始と合わせ、18年度から施策評価を実施する方向で検討。「節」単位での進捗状況を評価するとともに、まちづくりの目標に対する相対的評価と貢献度を評価し、その結果を次年度の実施計画に反映させていきたい。
評価にあたっては、他の自治体のベンチマークなども参考にし、事務事業評価の結果も活用する。
(4) 後期基本計画の素案づくりに携わった市民委員会の方々に参加してもらうのもひとつの方法と考えている。
民間シンクタンク構想日本が中心に行った横浜市経済局の事務事業見直し作業に参加しました。
他自治体議員や職員、企業経営者とともに、朝9:00〜夕方6:00過ぎまでみっちり、担当となった24の事業について、横浜市の職員の皆さんと激論を交えました。
事業一つひとつの内容やコストなどについての説明を横浜市職員から受け、質疑を経た後、事業主体として市が適切かどうかを判断するのですが、多くの事業が「市がやらなくてもよい」または「民間に任せた方がよい」という結論になりました。
もちろん、5分前後の説明と10数分の質疑ですから、事業の全貌が明らかになるわけではありませんし、今回、外部評価委員として参加している人たちは、議員や職員ではあっても、横浜市とは直接関係ない人たちですから、評価それ自体には多くの誤りも含まれていると思います。
しかし、こういった議論を経て、職員の皆さんは自分たちの行っている事業の正当性を市民に説明する難しさを感じることができたと思いますし、私を含む外部から参加した他自治体議員は、自分たちの自治体で、いかに職員間または議員・職員間の「阿吽の呼吸(顔と顔が見える関係)」で事業の内容についての議論が処理されているのか理解できたと思います。
いずれにしても、とてもよい経験ができましたので、ぜひ所沢でも!と思っています。
写真は、挨拶する中田横浜市長(あまり良い写真じゃないんですが……。)
なお、詳しくはこちらをご覧ください。