立法府としての地方議会

ローカル紙「日刊新民報」の夏期特集号に寄稿したものです。

一般質問など、地方議会のもつ行政監視機能が注目されがちですが、本来、地方議会は立法機関あって、条例を立案、制定することが仕事ではないのかということを言いたかったのですが、中途半端で少々かたい文章となってしまいました。


地方分権一括法が施行されて7年が経過し、最近では道州制の議論や三位一体改革が話題となるなど、地方分権ということばが聞かれるようになって久しい。

この間、地方政府(首長・議会)の権限は徐々に拡大し、まだ課題は山積しているとはいうものの、制度的には地域の実情に合わせたまちづくりや行政サービスの提供など、自治体独自の取り組みを行うことが可能となってきた。

一方、この分権の流れに反して、地方議会に対する市民の目は依然として厳しい。今年4月に行われた第16回統一地方選挙の平均投票率は都道府県55.25%、市55.32%、町村71.49%といずれも過去最低を更新し、議員の定数や報酬など、議員の待遇についての不満や誤解とともに、議会不要論までがささやかれている現状である。

「議会に対する信頼を回復するためにはどうしたらよいのだろうか」と考えるとき、当然、上述の問題を避けて通ることはできないが、私は、本来、議会は立法機関であり、この機能こそ、もっと注目されるべきであると考えている。

以下では、議会が地方の法律である条例の制定権をもつ法的根拠と、近年の議員提案による条例制定状況を改めて確認してみたい。

憲法93条2項は、首長と議員の直接選挙を定めており、自治体は、国の一元的な代表性(議院内閣制)とは異なり、首長と議会がそれぞれ独立して住民を代表する二元代表制を採用しており、地方自治法96条は、条例の制定・改廃、すなわち立法を議会の権限とし、同法138条の2にみられるように、首長を執行機関として明確に位置づけている。

また、同法90条及び91条では、議会の議員定数の上限を定めており(これが議員定数の唯一の法的根拠となっている)、地方議会の機能の一つとされている行政監視機能の行使のみについていえば、議員の数は少人数の有識者でも十分と考えられ、立法機能をはじめとする政策立案機能の発揮こそが同条の趣旨であるとも解釈できる。

さらに、地方分権一括法の施行は、首長を国の機関とみなし、国の事務を自治体に行わせる機関委任事務制度を廃止し、議会権限の及ばなかった自治体の事務をなくすとともに、議員の議案提出権を議員定数の8分の1以上から12分の1以上へと緩和した(112条2項など)。
また、昨年の地方自治法改正では、第28次地方制度調査会の答申をふまえ、議会内に設置される委員会にも議案の提出権を認めた(109条7項など)。

このような状況のもと、まだ数は少ないながら、議会のもつ立法機能を活用し、首長以下執行機関(行政)に対して地域独自の施策を義務づける議会も増加してきている。例えば、安全・安心な農産物の供給や食育の推進などを柱とした「えさし地産地消推進条例(岩手県旧江刺市)」や、子どもたちを地域一体で育てることなどを目的とした「秋田市子ども条例」、市民・行政・議会が協働でまちづくりを進めるためのルールや仕組みを定めた「四日市市市民自治基本条例(理念条例)」などである。

これら議員提案の条例に共通する特筆すべき点は、市民アンケートの活用や市政モニター制度の創設など、市民と議会が一体となり、条例を作成していることである。

確かに、国会とは異なり、地方議会は「唯一の立法機関」ではない。また、議員提案の条例の成立には、思想・信条の異なる議員同士による政策調整の難しさや、議会を支える政策法務スタッフの不足、議員の資質や意識の問題など、多くの困難も抱えている。

翻って、本市について考えると、議員提案により平成9年に全国で初めて制定されたダイオキシン条例(「ダイオキシンを少なくし所沢にきれいな空気を取り戻すための条例」)は、議会独自の条例として、多くの地方自治関連の書籍にもとり上げられており、議員提案による条例制定のモデルケースとなっている。

地方分権の進展は、自治体の自主・自立性を高めると同時に、議会の機能と責任をますます大きなものとすることに疑いはない。

議会の改革・活性化が叫ばれる現在であるからこそ、私たち議員は議会のもつ本来の立法機能を自覚し、市民協働のもと、条例制定を通じて自治体の政策に関与していく必要性を改めて認識すべきではないであろうか。

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