長谷部恭男・杉田敦『これが憲法だ!』(朝日新書、2006年)
憲法学者の長谷部恭男氏と政治学者の杉田敦が対談形式で憲法を論じます。
話題は、9条の問題はもちろんのこと、日米安保と憲法の関係や、解釈の問題、いま憲法を変えることについてなど多岐にわたりますが、いわゆる改憲・護憲論などとは一線を画し、憲法を理念・原理的語っています。
ポイントのひとつは、長谷部氏のいう「立憲主義」。「憲法をつくることによって、政治権力を縛るのが立憲主義である」という従来の考え方ではなく、「公と私を分け、多様な価値観を共存させる手立て」が立憲主義であるとしています。
読みはじめはこのような長谷部氏の考え方に少し違和感を感じていたのですが、終盤はお二人の対談に引き込まれ、「なるほど〜」と感じてばかりいました。
ちなみに、お二人の考えが一致した点は次の通り。
・憲法を書かれたテキストそのもの(条文)に限定して考えるのは生産的ではない。
・憲法が必要なのは、多様な考え方をする人びとの共存のため。
・現在のところ、憲法を変えなければならない理由はみあたらない。
久しぶりに憲法関係の本を読みましたが、憲法を考える上ではもちろん、知的好奇心も満たす本当に面白い本でした。