村上順『日本の地方分権』

日本の地方分権村上順『日本の地方分権』(弘文堂、2003年)

わが大学院、中村とおるの指導教授である村上先生の本。

以下、特に印象に残った一節。


「地方公共団体に関する法令」の法解釈作法(P. 230〜)
まず、法解釈という場合、通常、?立法者意思に即してテキストを統一的に論理解釈するものと、?立法者意思を視野に入れながら、関係法制全体に目配りし、テキストを体系的・構成的に論理解釈しようとするものと二つの立場がある。昨今では、前者は現代商法のように改正が頻繁に行われるものについてとられやすい。後者は民法や刑法のように、法制定後、相当期間経過し、その後の“社会状況の変化”を折り込みながら解釈する必要があるものについて、自然必然的に採用されることになる(例えば、民法九〇条の公序良俗規定と契約正義の関係など)。ところが地方自治法については、いささか事情が異なる。

たしかに今次の新地方自治法のように、法制定・改正直後にあっては、立案当局者≒立法者意思が珍重されがちとなる(例えば、松本英昭『新地方自治制度詳解』〔ぎょうせい・二〇〇〇〕や同『新版・逐条地方自治法』〔学陽書房・二〇〇一〕等)。しかしながら、他の法律と異なり、地方自治法については憲法第八章によって、その立法内容が“直律”的に規制されている特殊性があり、立案当局者≒立法者意思がそれとして実証されているとしても、憲法原理的なとらえ返しがなお必要とされる。単なる法律実証主義ではなく憲法原理構成的な法実証主義である。地方自治法がほかの法律に例をみない「地方自治の本旨」に即した“法解釈作法”(「地方公共団体に関する法令」の地方自治適合的な限定解釈と条例の適法性推定的な限定解釈)を定めているのはこれによる(地方自治法二条一二項)。

ところが、これまで自治体(職員)の法解釈は、ややもすれば立案当局者=法令所管省庁の法解釈(だけ)をあまりに珍重しすぎてきたのではないかと思われる。“中央照会型法務”を去って法解釈自治に就こうとするとき、必要なことは世界地方自治憲章草案やヨーロッパ地方自治憲章にみられる現今の国際的動向をみすえながら、当該地域の“立法事実の多様性”に即した規範論理的構成が求められる。自治体の法解釈自主権は、その出発点として地方自治法における“法解釈作法の特殊性”をまずもって意識することがだいじである(中央照会型法務と法解釈については、兼子仁『新地方自治法』〔岩波書店[新書]・一九九九〕二一〇頁、同『自治体・住民の法律入門』〔岩波書店[新書]・二〇〇一〕二一六頁)。

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