意味のない防犯推進条例

7月1日。6月定例会最終日。登壇し、市長提出議案「防犯のまちづくり推進条例制定について(PDF)」反対討論を行ないました。

もちろん、市が防犯活動を推進すること自体は大賛成なのですが、条例案は単なる理念を定めたものにとどまっており、あまりにも無意味、かつ、防犯活動を推進するどころか、市の「やったふり」に使われる懸念すらあるため、反対の意思表示をさせていただきました。

以下、討論で申し上げたことをもとに反対理由を書いておきたいと思います。

「なぜ条例なのか」について詳細な検討がなされていない

反対する理由の第1は、条例提案に至る経緯、とりわけ「なぜ条例なのか」について詳細な検討がなされていない点です。

本会議や委員会での議論を通じて示された条例提案に至る経緯は、「同趣旨の条例が県あるいは近隣自治体に存在すること」「議会において議員から制定を望む質問があったこと」等にあるようですが、自治体がそれぞれに自主立法権をもち、地域の実情に応じた条例を制定しなくてはならない地方分権時代において、同趣旨の条例が県や近隣自治体に存在することは本市における条例制定の根拠とはなりえませんし、議員からの質問についても空き家対策をはじめとする現実の問題に対する実効性ある対応や、市民等の防犯活動に対する具体的支援を求めるものであり、本議案のように理念条例の提案を求めるものではありませんでした(と、私は思っています)。

また、防犯の推進に係る計画の策定や、安全安心都市宣言のような宣言、予算措置での対応でなく、条例となった理由として、平成21年春の柳瀬地区防犯協会総会にて条例をつくるべきだという声があったとのことですが、既に同年2月23日には庁内において第1回(仮称)防犯のまちづくり条例策定検討委員会を開催して条例制定の目的等を協議しており、この声をもって条例の策定となったという答弁は矛盾しています。

委員会の場で「最初から条例制定する計画でした」との発言もありましたが、おそらく、条例にするのか、あるいは予算措置で対応するのか等といった検討はほとんどなされず、「県や近隣自治体に同趣旨の条例があるからウチも……」といった理由から条例の策定に踏み切ったのではないかと思われます。

本来、条例は何らかの政策目的のために制定するものですが(だから「政策」法務だと思うのですが)、本条例案については条例制定自体が目的になっているような感じです。

理念条例にとどまっている

第2は、本条例案が理念条例にとどまっている点です。関連予算の提出は当然ありません。

理念条例制定の是非については、一般的に、自治体の基本理念や政策を長と議会の共通意思として表明するという意義はあるとしても、その濫用は条例自身を形骸化させ、結果的に自治立法権の空洞化を招くという指摘もあり、議会・執行部ともに慎重に対応する必要があるはずです(予算の調製権や提案権がなく、条例の制定以外の方法では市政運営に直接的な影響を与えることができない議会ならまだしも、規則や要綱の制定、予算措置での対応が可能な首長以下執行部にはなおさら慎重さが求められるはずです)。本会議において桑畠議員が兼子仁・北村喜宣・出石稔共編『政策法務事典』(ぎょうせい、2008年)に書かれた「自治体の自治立法権が拡大したからといって、やみくもに条例を制定すればよいというものではない」という山口道昭・立正大学教授の言葉を引用した通りです。

総務常任委員会の協議会でも提案させていただきましたが、本来なら、自治体の立法府たる議会において、広範にわたる市民参加のもとに、例えば、市に防犯に係る計画の策定を義務付けたり、具体的な予算措置を明記する等、より実効性のある条例に進化させなければならなかったはずです。

役にたたない条例になっている

ですから、率直に考えて、本条例案は現在ボランティアで防犯活動をして下さっている個人・団体の方々にとって、ほとんど無意味あるいは役にたたない条例となっています。条例制定を望んだとされる柳瀬地区防犯協会の方、議会の質問で訴えた各議員は本当に理念や責務のみを定める条例の制定を求めていたのでしょうか。私はそうではないと考えています。おそらくは、防犯活動に係る具体的でより実効性のある支援を条例に規定することを求めていたのだと思います。このことが今回市長から提案された条例案に盛り込まれていないことが非常に残念でなりませんでした。

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